toward morning小噺・前編

二年前の春、親の金で大学に通っている立場でありながら大学の食堂でのバイト、コンビニでの夜勤に明け暮れ平均的な新入社員なみの月収を叩き出していた。どう考えても養われまくってるのに年収が130万超えただけで外れてしまう扶養、社会のリソースを食いつぶす京都のボウフラ然とした生活。昼夜の概念を失い、そもそも昼夜の概念のないインターネットでひたすら音源と機材を買い漁っていた。

 

2013年4月25日、青春を燃やしたバンドであるthe band apartが出した新しいアルバムを聴いていた。アルバムの終わりが収録曲のアレンジを変えて繋いだインストのようになっていて、それを聴いているうちに何故かリズムマシンの抑揚のない4つ打ちのパターンが想起され、DAWを起動しそのようなものを打ち込んでみた。しかし特にピンと来ることもなくパソコンの電源を落とし眠ってしまう。(ちなみにシングル二曲目もband apartからの引用がある)

 

(参照部分はこの曲のイントロ部)

 

昼夜の概念がないボウフラは深夜にむくむくと起床。そのとき住んでいたアパートは京都の誇る名山吉田山(標高105m)のおおよそ2合目に相当する位置にあり、堕落者の義務である深夜徘徊よろしく5分間に渡る壮大な登山を開始し、black iceのアルバムを聴きながら吉田山の山頂をブラブラしていた。そのアルバムに収録されているchicago gangstersの名曲blind over youのカバーがいたく気に入り、star slingerの「70sソウルは即刻め」という心の声(嘘)を聞き急いで帰宅。適当に刻んで昨日のプロジェクトファイルに乗せてみるとこれがなかなかいい出来だったのでそのまま"night"というタイトルをつけてsoundcloudにアップ。外をみると日が昇っており、「nightちゃう、morningやんけ!」

数日その状態で放置し、その中途半端な完成度に悲しくなり削除してしまった。

その後やたらとシンセ入れたり3本くらいギターを足したりスタジオラグ北白川店でアーとかウーとか言ったコーラスを録ってみたりと迷走を続け、その後HDDを食いつぶすゴミと化したそれらのデータを消し去り、やたらとシンプルなものにして完成とした。「夜の向こうへ」「blind over you」という二つの元ネタの語感から、「朝が来ちゃったことにするか」という事で"toward morning"というタイトルを付けたのであった。(後編へ続く)

(インスタのこの動画によると2013年の夏頃の話)