in my own way e.p. セルフ全曲解説

 自分の作品説明すんのってやっぱダサいよな〜的なことは毎回悩みむが、それでも、自分が参照したのはなにで、どこまでが先人の功績なのかは、自分が把握している範囲で書いておきたいと思ってしまうワケ

【背景】

 前作「Recollect The Feeling」で大真面目にアルバムを作ったので、一貫した雰囲気などは考えず、気晴らしに作った曲の佳作集としてEPにすることを目指す。作成開始当初の目標は5曲。オーバーランして結局6曲入りに。

 

【テーマ】

・やりたいことがわかってきたのでがんばるぞ

・おれはおれのやり方でがんばるぞ

 ”やりたいこと”とか” おれのやり方”ってなんやねんっていう話になってくる、口で説明できたら苦労しないが「なんとなく掴めてきたで感」の表明を目指す。言葉でうまく言えない感じを表現するのが音楽ということで・・・。とにかく活動スタンスと曲で察してくれ的な。

 

【リリース形態】

 配信+レコードにするつもりが、意外とCDヘの需要の声があったのでCDも。

 トマソンスタジオで”いったん一通り自分でやってみる重要さ”を改めて実感したので、「マジで全部一人でやる」という方針に決定しアートワークもミックス/マスタリングも外注なし。自分の実力がむき出しのまま発射されるのはやはり気持ちがいい。

 迷ったがCDの全国流通はせず。全国流通しないと、世間のシステムに作品のナンバリングが(物理的な商品として)登録されないわけである。商圏に登場していない、ということは基本的には商売上の相手にされない(タワレコに売っていない物がタワレコのメディアで紹介されることはない的な話)のであるが、その感じはin my own way感に通ずるという結論での選択。

 私を取り上げているメディアなどは利害関係抜きの取り扱いになるので、頭が上がりませんね。

 

<金の話>

 自分の規模を数字で説明すると”1000枚プレスのアーティスト”であるわけである。リリースによって200万円弱のパイが発生し、それをディストリビュータ、小売、レーベルなど関わった人で分配していくことになる。(ちなみにいうと、国内市場で考えた時に、外的な駆動力でこれ以上の規模に引き上げることは自分の曲では無理だと思っている)

 今やってることを簡単に言うと「ステークホルダーをほぼ自分一人にする」と言った感じ。流通パワーの下駄を取っ払うと、CD売上的な意味でのパイはさらに縮小し、世間から見た規模感はますます小さくなる。泡沫ミュージシャン感は増す一方であるが、道楽ミュージシャンが世間の目を気にしている場合ではない。

 一方で、サブスクは自分にとってほぼ天国のような仕組みで、泡沫ミュージシャンなのにSpotifyだけで年間100万再生は回る。自分の楽曲は増えることはあっても減ることはなく、流行り物でもないので曲を出した分だけベーシックインカム的に収益は増える。

 ということで、私の基本方針はCD(+レコード)は思い出づくり、金はサブスク頼み。やるべきことは、たくさん聴いてもらえるような強度のある曲を作れるようにがんばるのみ。大衆音楽でもない自分の音楽で、そんなやり方が通用するようになったのはテクノロジーの恩恵そのもので あり、技術による民主化に他ならない。

  

<制作期間>

2019年の11月頃〜。大体半年くらい。

 入れようと皮算用していた時津町の曲が入らず、急に思い出してAfternoon reverieを代打でねじ込んだのでその曲だけ古い。

 今回謎に制作の様子をYoutube liveで配信していたおかげで、”マジで曲が発生する瞬間”が記録に残っているのがかなり興味深い。自分で見返しても笑える。

 

1.Back Then

 Piano in blueというピアノ音源の音を痛く気に入っており、ポロンポロン弾いていたらYouth lagoonのことを思い出しできた曲。

正月休み最終日、仕事行きたくなさすぎて深夜まで制作する様子が見れてワロてまう

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 トラック自体は思いついたピアノのコードリフ1発勝負の内容。山下達郎-高気圧ガールの「nnnなめらかな〜」とかフジファブリック-若者の全ての「ssssss最後の〜」とかの頭の子音を勝手に"溜めの子音"と呼んでいて、ボーカルエディットでこの"溜めの子音"をできるようになりたいなという技術テーマもあり。

 

 話は変わって、Youth lagoonのThe Year of Hibernationというアルバムは自分のマスターピースのうちの一つ。情景描写+鬼内省の権化のような作品である。歌詞の書き方も好きで、情景描写+比喩で気持ちを描くみたいなスタイルの曲が多い。

 

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 作中の"17"という曲の中に、

When I was seventeen
My mother said to me
"Don't stop imagining. The day that you do is the day that you die."

なる恐ろしいラインがあって、このオカンがリアルオカンなのかメタファーなのかは置いておき、Trevor Powersの作品にはそう言った強迫観念めいた感覚みたいな物が実に濃く出ているように感じており、そこが魅力であると同時に、自分はそう言ったシビアさとは無縁であると常々感じます。

 そういった意味で、自分の目指す的を”Youth lagoonからヒリついた成分を抜いて、もうちょい軽薄かつ無意味にしたもの”と表現するのは、割といい線いっている気がしている。

 

2.Breakthrough (for me)

 おれがStar slingerから学んだサンプリングの方法論に、もうちょっとベースミュージックの手法を入れられないかなと思って作った曲。

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 S-Type - Billboard (Lido Remix)の1:00〜のブレイクから二拍目裏でサブベースが入ってくる展開をそのままパクってます。(1:03らへん)

 マルチネがリキッドルームでやった”東京”なるイベントでオカダダ氏がこの曲かけた時のことは昨日のように思い出します(ここからジャングルに繋いでいって強い感銘を受けた)。

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 多分EPの曲の中で一番ライブセットでかけていて、年明けくらいから現場でこねくり回して3月くらいに今の構成に落ち着いた記憶。クラブでなる808ベースは替えが効かんすね〜

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ありがたいことにTracklibのオウンドメディアでも取り上げていただきましたが、Flashlightの“Every Little Beat of my Heart” が元ネタです。

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 サンプルのライセンス仲介サイトtracklibに関して、我々個人のサンプリングを愛するミュージシャンからすると神のような仕組みに思えますが、実情は思った以上に厄介です。

 著作の収益分配をする上で、結局アメリカの法の元契約を交わすことになり、W-8BEN(米国源泉徴収における受益者の海外在住証明)出してPRO (Performance Rights Organisation)に作家登録までしなければならず、正直自分が全ての手続きを完璧にできているのか怪しいところがあり、なかなか人に勧められません。興味がある方がもしいたら、自己責任であれば相談乗りますが、相当めんどくさいことは覚悟しておいてください。


3.in my own way

 最初の展開はマジで一瞬で出来たのに風呂敷がたためず苦戦した曲。後半以降の展開はリリース直前で無理やりひねり出したので、今作りかけのデータを渡されたら違う内容になると思います。

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 前半をBPM135の4/4グリッドベースで打ち込んでしまったため、1:02からの6/8の最後の1-2拍が消えたり現れたり(と自分は解釈している)する展開を思いついてプロジェクト上で整合が取れなくなったりなど、テクニカル面では苦戦。最後大団円っぽい感じにしてしまうのは私のクセなので仕方がありません。

 

4.Afternoon Reverie

Image with no description

 2017年に"45秒ずつトラックを掛け合いバトルする"珍奇なトーナメントに出場したことがあり、そのとき用の弾として作った曲。

 のちにボーカルエディット講座の実演セクションのオケに使ったりなど、謎に稼働させられるなどするも3年放置されていたかわいそうな曲。

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 高校生の時の自分にとって洗礼と言えるほどの作品であった蓮沼執太さん"POP OOGA"らへんの作品のオーディオ編集の方法論的な上物+自分の手癖的な内容。蓮沼さんのどこまでいってもキャッチーな感じには多大な影響を受けていますが、"POP OOGA"、”OK Bamboo”の二枚は自分の中では殿堂入りの2枚です。

  オーディオをカットアップした際の切れ端のプチプチノイズをどれくらい入れるか、というのは割とずっと試行錯誤していて、プロジェクトファイル中のオーディオの切れ端を丸めたり丸めなかったりというのは、かなり重要なように思います。一括処理で適当にやると急にグルーヴがなくなったりするのが不思議。やはり神は細部に・・・

 

5.Footloose

 安室奈美恵のサブスクが解禁し、海外出張帰りの飛行機で聴いていたところ、大名曲Baby Don't Cryに数年越しに心を打たれてしまったわけである。この曲の根幹をなすリズムパターンで曲を作ろうというアイディアが浮かぶもしばらく放置。

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 ある日突然Batsuくんが平日の夜に家にやってきた時、「なんか曲作ろや」と言われたのでメインのボーカルパターンとコード進行作ったまま再び放置、EP制作に当たりリードトラックにする気満々で続きを作りました。

 びっくりするほど歪ませてヨレさせているボーカルと、散々使ってるMassiveサイン波そのままのコードをパチパチクリップさせてるところが音作りのキモでしたが、パソコン音楽クラブ西山くん曰く「書き出しミスってデジタルクリップしてんのかと思った」との。

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 PVはうにゃだゆういちさんに踊ってもらうことは自分の中でだいぶ前から決まっていていたのだが、いざ頼もうと思ったら緊急事態宣言が出てしまったりなど。なんだかんだ今木くんの協力のもと無事撮れてよかったです。

 
 
 
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絵みたいな空⛅ この空のしたで踊れることに幸せを感じる。 #UNYADA

うにゃだゆういち UNYADA(@unyadance_typhoon)がシェアした投稿 -

  うにゃだゆういちさんはインスタにあげてるように、仕事終わりなどにときおり淀川で踊っているそうで、おれはそういう感じの”仕事終わりに淀川で踊る”的な自分のための創作活動がとても大切なものだと思っています。自分ににとっての音楽とかもそう、別に手段問わずこの感じ・・・。そういう気持ちを共有したいな〜みたいなことを考えていたので、それが無事できてよかったなあと勝手に思っています。

 大衆を揺り動かすようなものでなくても、個人のための表現活動があるんや、だからおれらはやらざるを得ないんや、みたいな気持ちは、本作品で言いたいin my own way感のだいぶ急所でもあります。

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6.Longing

 一作品に一曲はインディーロック的な曲を入れたいよねという曲。見事に曲発生の瞬間が3時間にわたり記録されており貴重。

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 バンアパの2017年作"Memories to Go"を聴きながらなんとなく思春期を思いつつThe Embassyの"Tacking"に見られるようなリズムマシンインディー歌謡を作りたかったのです。

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 過剰にギターをぺらぺらにしたくなってしまうのは一般的な嗜好との解離を感じてしまいますが、歌メロは本作で一番お気に入りです。ギターの弾く楽しさと完全に独立して、やっぱりギターの音色は好きだなと改めて思います。

 

次は適当に細々したリリースでお茶を濁しつつ、明るく楽しい3rdアルバムを作っていこうと思います。

 

なんとなくSpotifyで本作を作る上で影響を受けたっぽい曲たちのプレイリストも作ってます。何卒。

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