無題

10月8日

大都会と砂丘が終わり、日付も変わった頃、サイゼリヤで見知らぬならず者たちがした蛮行の数々、そして生み出されるは"クラブに行くっきゃナイ"という名言。東京の繁華街のファミレスで治安を維持する難しさ、ならず者たちがまき散らかしたタバスコの香りとともに今年のマルチネイベは終幕。こんなときくらいタクシーに乗ればいいのに、機材と物販を抱え物思いに耽りながら3kmほどのんびりと歩く。気づけばairbnbでとった宿に到着。ベッドに横になった途端に服も着替えず寝てしまった。

 

10月9日

目がさめるやいなやスピンコースターミュージックバーへ。でっかいスピーカーで自分の曲や好きな曲を聴きながらホサカさんと喋る。意外と自分のインディっぽい出自と、今の活動どちらにも理解のある人は少ないので、普段はしないような話ができておもしろかった。その後は適当に都内をプラプラ。阿佐ヶ谷で適当に入ったジェラート屋が最高だった。機会があればまた行きたいと思う。いろんな人にCDの感想をもらったが、「音楽の細かいことはよく分からないけど、"照れ隠し"っぽいね。」と言われたときはハッとしてしまった。

 

10月某日

母親から突然タワレコ梅田でCDを買ったという旨のLINEが。ここまで音楽活動のことを隠していたつもりはないが、特に話をする機会があったわけでもない。よくよく考えると親にちゃんと説明したことがなかったことに気づく。親も親で、いかにも偶然見つけて連絡してきました感を出してはいるが、実際はそうではないのではと勘ぐってしまう。前々から聞こうとは思っていたがタイミングがなく、いい機会だったのでやっと連絡できたのではないかと思ってしまうのは考えすぎか。

"トラックメイカーて何  DJ KOOしか思い浮かばない"

は完全にパンチライン。とはいっても、自分自身トラックメイカーという単語が何を指しているのかよくわかっていないし、自分がそれに当てはまるかどうかも謎である。プロデューサーとかでもないし。兎にも角にも、CD出したらミュージシャン。知らんけど。

 

 10月15日

リリースパーティーの仕込みを存分にしたかったのに、研究室でのTAなど諸所いろいろ重なってしまいいまいちやりきれぬまま前日を迎えてしまう。せっせと素材を書き出しているうちに寝てしまい、バタバタしながら京都駅へ。ネイティブラッパー氏と駅で合流し、ベラベラ喋りながら東京へ。リリパにくる人は、純粋に自分の音楽が好きだったり、音楽のことは分からないけど、有村がなんかやるらしいし行こうぜ、程度の人だったりする。そのグラデーションがおもしろい。自分のプレイの最中、後方に長らく会っていない姉が来ているのがみえてあらゆる感情が吹き飛んでしまった。プライベートで連絡を取ったのは、大学院入学時、奨学金の保証人になるよう頼んだとき以来である…

 

10月16日

airbnbでハズレを引いてしまい、ホストのおっさんがスパスパ煙草を吸っている横での就寝により、いまいち疲れが取りきれず。新幹線で爆睡していると京都に着いており、魂が抜けたまま自宅で天井を眺めていたらリハの時間が迫っていた。大阪リリパ、昔からの友達、大学の同期や後輩、音楽を作り始めた10代の学生、ピアノの先生、さらには内定先の社員まで、バラエティ豊かな人材の来訪。終始ピースフルな雰囲気。前日の姉のこともあり、まさか母親もくるのではとビビるも結局こず。心のどこかでみてもらったほうがよかったんじゃないかという気持ちも。終演後じねんで寿司を注文するもなかなか来ず、注文した寿司を食わないという損切りできずにいるうちにトリエナ嬢とともに阪急電車の終電を逃す。JRとタクシーを駆使してなんとか帰宅。泥のように睡眠。リリパに来てくれたみなさん、本当にありがとうございます。

 

自分がやってる音楽のシーンの盛り上がりはあくまで"東京ローカル"であると言われることがある。自分自信、東京のイベントに出るたびにその規模や盛り上がり具合が大きくなっていって、それが身の程にあっているのかよく分からなくなるときもあったりする。そういった背景もあって、リリースパーティーと銘打って東京、大阪と2日連続でイベントをやるにあたって、東京は人がそれなりにくるだろうと思ったけど、大阪はどうだろう…などという不安を抱いてしまったりなどするわけである。蓋を開けてみると、大阪公演は東京を超える集客があり、その日の雰囲気は音楽をやってきてよかったと思えるようなものであった。自分はもうずっと関西に住んでいるし、気づけば自分の音楽を気にかけてくれている人が身近なところにたくさんいて、ありがたくも、CDを出したことを喜んでくれたりする。この機会に再確認できたよかったと思う。

 

結局、曲を作れば作るほど音楽が上手になるし、音楽をしていると友達が増える、ただそれだけのことだと思う。これまで音楽を続けてきて、それを通してできた友達や、知らぬ間に身についた技術は、インスタントなものではなく、時間をかけないとできないもので、胸を張れるようなものなんだと、ここにきてようやく思えるようになった。友達は増えることはあっても減ることはないと思うし、音楽のことは少しずつわかっていく。音楽を作ることで自分の人生は確実によくなっている。それはこれからも音楽を続けるのに十分な理由であろう。徐々に付き合いかたは変わっていくだろうけど。